報告者 山添 拓弁護士(東京法律事務所)
12月14日、金融・労働研究ネットワークは「改正労働契約法をどう実現するか―不更新条項を克服して無期転換・均等待遇実現を」をテーマに研究会を開催。東京法律事務所の山添拓弁護士を講師に招いて報告を受けた。山添弁護士はまず非正規・有期雇用労働者が急増している実態を指摘。改正労働契約法の意義と問題点を解説し、どう活用するか提起した。
メガバンクなど大手金融機関では大量の派遣労働者の直接雇用への転換が進められている。三菱東京UFJ銀行では、これまで派遣で働いていた労働者の銀行本体や事務子会社による直接雇用が進められているが、雇用契約の更新期間を5年上限とする条項が設けられるなど、職場から不安の声が出されている。
この問題については、山添弁護士は団体交渉などで更新期間の上限には同意していないことを繰り返し明示することと合わせて、改正労働契約法の趣旨を生かして組合の側から「期間の定めのない労働契約」の申し入れを積極的に行うなどアドバイスした。
山添弁護士は規制改革会議などが提案している「ジョブ型正社員」を職務、勤務地、労働時間の限定された「限定正社員」とし、これに対して、従来の正社員を「無限定正社員」と説明。
ジョブ型正社員=限定正社員は「正社員」とされるが職務や地域が限定されていることから、その職種や地域における業務がなくなった時に解雇される危険を指摘。規制改革会議等の提案では「ジョブ型正社員」は「職務」や「地域」を選択できるとメリットを強調しているが、そういう選択の余地のない現在の正社員の権利保障をどう実現するべきかも問題となると指摘した。
現在の正社員を会社の都合でどこへでも転勤させられ、長時間労働を余儀なくされる状態に放置しておいて新たに「ジョブ型正社員」を創設することは、一方で自由に解雇できる「正社員」を作り出し、他方で現在の正社員=無限定正社員をさらに無権利状態に追いやるものと批判した。
「ジョブ型正社員」が導入されるとコース別人事制度の「一般職(ほとんどが女性)」がこの「ジョブ型正社員」とされる懸念がある。また、三菱東京UFJ銀行で出されている「無期雇用職種」契約社員も「ジョブ型正社員」の先取りとなりかねないこともこの日の研究会で検討された。女性正社員への差別是正と非正規労働者の均等待遇実現を同時に取り組むことの重要性が確認された。(2014年5月22日up)
表示・ダウンロード:報告資料 「改正労働契約法をどう実現するか―不更新条項を克服して無期転換・均等待遇実現を」